トップ > 無線LANよろず講座 > 無線LANあるあるトラブル|学校の無線LANは超過酷??
2021.05.10
当社には一般エンドユーザをはじめ、システム開発会社様やネットワーク関係の会社様、商社等無線LANに関連するさまざまな通信不良等のトラブルのご相談や調査のご依頼を頂いています。
このコーナーでは実際にあった無線LAN障害の事例を御紹介します!!こちらをご覧になられた方々が同じような不具合に悩まされていましたらトラブル解決への糸口になればと思います。
学校の無線LANは超過酷??
少し前には政府のギガスクール構想で全国の学校で一斉に無線LANの導入が進められました。
弊社でもギガスクールではSI企業様、商社企業様や工事関係企業様、無線LAN機器メーカ様等のご紹介や業務委託による請負、コンサルや無線ネットワーク設計、L3スイッチ等もネットワーク設計等を行わせて頂きました。
ギガスクールよりも少し前ですが、ある私立学校の情報担当者の方よりご相談を頂きました。
ご担当者のお話しでは、
当校では数年前から無線LANを導入しており、授業でも無線LANでインターネットに接続してパソコンを活用している。
しかし、授業で無線LANを使用すると教室の生徒の何人かが必ずインターネットに接続が出来ない状態が常態化している。
特定のパソコンに限った話ではなく、原因が掴めないままアクセスポイントを交換したり、スイッチを良い物に交換したり、他のSI企業に相談をしたり等、さまざまな対策を行ってきたが一向によくならない。
と大変お困りのご様子でした。
ご相談をお聞きし、弊社から
状況を確認したいので授業の様子を見せて頂いても宜しいですか?
と伺った所、是非見て欲しいとおっしゃられました。
実際の学習状況を見せて頂くと映像授業等が積極的に行われていました。また時間帯によっては生徒さん達は予備校?の学習映像の視聴をされているようでした。
学校関係のネットワークはどこの学校をみても大変過酷な環境だなという印象を受けます。
例えば一般企業であれば各自のPCをネットに接続する時に出社した人から順にネットワークに接続をします。
業務中に調べものするにしても全員が一斉に検索ボタンを同時に押すなんて事はあまり考えられません。
しかし学校では教室で生徒が一斉にPCの電源を入れ先生の号令で同時一斉に大量のトラフィックを発生させます。
こちらの学校でも1クラス40人程の生徒が一斉に動画を視聴したりといった大きなトラフィックが発生していると見受けられる状況でした。
無線LANの環境はというとアクセスポイントは主に廊下に設置されている所が多いなという印象を受けました。
こうしたPCを使った授業は学校内で同時に他のクラスでもおこなったりするのですか?
とお聞きすると
全校生徒が一斉に行う事はないが、3~5クラス位は同時に同じような授業をやっているかもしれない。
という事でした。
1PC辺りの通信トラフィックが2Mbps程度とすると1教室80Mbps、5クラスとすると400Mbps程か・・・。
と頭の中で考えたりします。もちろんこんな単純ではありませんが、あくまで目安での計算です。
有線LAN側を確認します。
ネットワーク構成図など必要な情報の提供を受けます。
スイッチは比較的良い物を使ってるようで比較的新しい物でした。館内や校舎間はメタルで接続されています。
そしてインターネットの接続は光回線1本で接続されていました。
そしてルータは確かに悪くない物を使用していますが、SWやルータのスイッチングファブリック等諸々の情報をメーカ仕様書で確認してみましたが、少し不安があります。
学校内ネットワーク全体で見たセッション数も考えていかなければなりません。
少し不安を持ちながら、ご担当者様に例えばサイトサーベイを実施して無線LAN環境を最適化する事で今より少しは改善する可能性はありますが、根本的な解決にはならない可能性も有る事を、その理由も含めてお伝えしました。
すると、丁度ネットワーク設備を全体的に更新する動きがあるので、このタイミングで調査を実施して欲しいとご依頼を頂きました。
無線調査を実施し、機器の入れ替えも含めてご提案のご依頼も頂きました。
まず既設のネットワーク仕様が少し曖昧でしたので、資料に落とし込みを行い、現行仕様とネットワーク構成を整理しました。
アクセスポイントのご提案では特に症状が重い一部のエリアでアクセスポイントの評価機を暫くの期間貸し出しをさせて頂き、一定期間一部の教室で使用して検証させても頂きました。
この時、サイトサーベイ結果に基づき機器の設定等も現環境に合わせて置局設置しました。
次に校内ネットワーク全体の見直しです。
サーバー室のコアスイッチが性能面で少し不安がありましたので、これをL2スイッチから一部L3のスイッチに交換したり、L2スイッチも他の機器に交換等を行う事になりました。
次にインターネット回線がボトルネックになっていましたので、光回線を1本から複数本に増強し、L3スイッチからルータに複数本接続を行い通信を分散しました。
これまではルータがルーティングポイントになっていましたが、その配下のL3をルーティングポイントに変更し、校舎の階層毎等想定される利用状況に併せてVLANで分割を行いました。
それまでこの環境ではルータがDHCPサーバーとDNSサーバーの役割を果たしていましたので、この2つのサーバー機能はL3スイッチに変更しました。
DHCPやDNSサーバー機能は意外と機器への負荷が大きかったりしますので、この機能を他の機器へ振り分けるだけでも大きく改善するケースはあります。もし予算に余裕があればDHCPやDNS専用のアプライアンス製品を導入する事も有効です。
これまではインターネットへのアクセスが光回線1本だけでしたが、複数本に分散させる事で、インターネットアクセス回線のトラフィックを分散させインターネットがボトルネックになる不安を解消しました。
さらに先生用のネットワーク、生徒用のネットワーク、ゲスト用のネットワークをVLANで分割します。実際には機器管理用VLAN等も割当てます。
こちらの学校ではオープンスクール等も行っている為、オープンスクールに来校されたゲスト用のWi-Fiも追加する事にしました。
AP毎に複数のVLANが発行されている状態です。マルチSSID機能が使えるAPですと、VLANのIDとSSIDを紐付けてVLANで分割させる設定が出来たりします。
物理的にネットワークを分けるよりもAPのマルチSSIDとVLANでネットワーク分けてあげる方がAPの数が減りますので干渉の影響は最小限になります。
こうした仕様変更により校舎の各フロアにあるスイッチも追加を行います。
アクセスポイントは全て教室の中に置局するようにし1教室1APとなりました。
廊下等の共用部は基本的に教室から漏れ出た電波を拾う事が出来ます。その為廊下へのAP置局は行わない事にしました。
教室毎に1APの置局設計はカバーエリアだけを見ると建物全体的には置局数が多い過剰気味の設計にはなりますが、1教室40人程度の生徒が同時に接続するのであれば適正数量ではありますが、このままでは意図せず電波が遠くまで飛んでしまう事で任意のAPは他のAPに対して干渉を与え易くなり、思わぬ通信障害の原因になる可能性があるというデメリットもあります。
干渉の影響を極力軽減する為に電波の出力もデフォルトよりかは幾分弱めました。どの程度出力を弱めるかの判断は別途実施したサイトサーベイの結果をベースに電波の受信電力(RSSI値)の測定を測定器で実測を行いながらの数値を参考にして設定に反映していきます。あまりAPの出力を弱めすぎてしまってもSNRの値が悪くなって通信品質が悪化してしまうので、この辺りのさじ加減も重要です。
無線LAN部分だけでなく有線LANも含めて全てが更新され、更新後は一切の不具合が無くなりWi-Fi通信がとても快適になったと喜んで頂く事が出来ました。
今回の当初の事象は複数の複合的要因ではありますが、大まかにはネットワーク規模に対してネットワーク機器の選定がスペックが少し追い付いていなかった事、インターネット接続部分のボトルネック、そしてAPのセル設計もですが、CHの割当が不適切であったことが大きなポイントだったかと思います。
この構成では少しネットワーク規模が大きくなってしまいましたが、サイトサーベイの結果を元にCH設計を見直すだけでも大きく改善する事があります。またCH設計の見直しだけでなく、APの移設を伴ったセル設計の見直しを加えて大きく改善したケースもあります。
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