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2020.06.22
当社には一般エンドユーザをはじめ、システム開発会社様やネットワーク関係の会社様、商社等無線LANに関連するさまざまな通信不良等のトラブルのご相談や調査のご依頼を頂いています。
このコーナーでは実際にあった無線LAN障害の事例を御紹介します!!こちらをご覧になられた方々が同じような不具合に悩まされていましたらトラブル解決への糸口になればと思います。
APを天井に設置するとAPが起動しない??
これは非常に稀なケースなのですが、何かあった際に嵌りそうな事例なのでご紹介します。
あるお客様にて事業所全体のAPの新規導入を承りました。
APのご導入のお話しから始まりましたが、結果的にご依頼は社内NW全ての更改となり、コアスイッチや各フロアSW全てが交換となりました。
ご依頼を頂き、新設のSW等の事前設定等のキッティングも早い段階で終わらせ、事前ネットワーク試験もコアSWのスタック接続による機器冗長化やLAGによる配線冗長も抜線を伴う冗長試験等、諸々の事前試験も問題なく順調に作業が進みました。
準備は万端、不具合等起こりようが無いと思い、導入当日を迎えました。現地作業工期は複数日に渡ります。
LAN配線は協力会社に依頼し、ケーブルはCat6A、ケーブルのFluke試験も問題なく合格していきます。
SWもEPSへボックス収容で設置し、LAN幹線の試験もLAGの抜線試験も現地で再試験する等、念には念を入れて導入作業を進めて行きます。
そしてAPを天井に取付けし、AP毎に1局ずつ試験をクリアしていきます。
全てが順調と思われたその時、LAN配線とAPの取付を担当していた作業員から突然トランシーバーで連絡が来ます。
「〇階のAPのいくつかが起動しません」
直ぐにSEと現場に駆け付けます。
何が起こったのか、原因はなんなのか?直ぐに障害の切り分けを開始しました。
まずいくつかの可能性を考えます。
まずはひとつずつ問題を検証していきます。
まずは5m程のパッチケーブルを直ぐに作り、APを天井から取り外して、EPSの場所までAPを持って行き、フロアSWの同じポートにパッチケーブルで接続してみます。
起動しなかったAP全てが正常に起動しました。
この結果からAPの故障では無い事が分かりました。
また、SWへの接続も天井へ配線したケーブルと同じポートに接続したので、SWの故障の可能性も低い事が分かりました。
では
ケーブルの不良を疑い、両端に測定器を接続してFluke試験を再実施。結果は何も異状がない事が分かりました。ケーブル長も余長含めてせいぜい40m程度、長さの問題でもありません。
Fluke試験を合格しても通信に異常が出る可能性があるのか?? あまりそのような経験はありませんが、念の為に試してみる事にします。
天井のLANケーブルは天井裏に一定の余長を残していますので、少し引っ張り出して床の所まで伸ばします。反対側は元のSWに接続しています。
天井から引き下ろしたケーブルに測定器を接続し、インターネットへ出る事が出来るか確認します。結果は全く問題なくインターネットへ接続出来る事が分かりました。
スイッチにも異常が無く、ケーブルにも異常が無い、アクセスポイントも異常が見られない。現場のSEも含めて全員で首を捻ります。
ひとまず、もう一度APを天井から下したケーブルにAPを床において再度接続してみます。
今度は何故か正常に起動しました。
その場の作業員、SE、全員が何が原因だったのか何も分かっていない状況に陥りました。たまたま起動しなかったのか??
もしかしたら、LANケーブルの成端に問題があるのではないか?Cat6AのケーブルなのでAPに接続している折り曲げの径に問題があるのではないか?と色々と意見が飛び交います。
ひとまずLANケーブルの両端のコネクタを再度成端する事にしました。
再成端が終わり、Fluke試験も合格を確認します。
床の面にAPを置いてコネクタの周りに少し強めに力を加えて曲げてみたり、実際の取付時以上に径を絞ったままAPを起動させてみたりしましたが、異常は見られず正常に起動する事を確認しました。
他の残りの作業もある為、この問題の解決はとりあえず保留とし、他のAPの取付と試験作業を優先します。
異常のあったAPは本来設置すべき天井の位置に再度戻して設置します。
この時、元の位置に戻したAPは何事もなかったかのように正常に稼働していました。
念の為に接続試験とインターネットアクセス試験も実施しましたが、さっきまでの異常はそれから見られませんでした。
原因が分からないまま正常に稼働しているAPの挙動に違和感を感じながら残作業を続けていきます。
ほぼ全てのNW機器を取り付け終え正常性も確認し、最後に再起動試験を実施します。
今後の運用を感がえると計画停電にも備えて再起動試験はとても重要です。全てのSWとAPの電源を切り一斉に機器の再起動を行っていきます。
全てのNW機器が正常に起動し正常に稼働しているか、システム側からの確認を行うと同時に別班は各機器を目視確認しながらローミング試験も同時に進めていきます。
すると、目視確認の作業班からトランシーバーがなりました。例の異常のあったAPがまた電源が入っていない。
当然ながらSEは現場へ駆け付けます。
ちょっとAPの所まで登ってLANケーブル抜き差ししてみて下さい。
と指示が飛びます。APを天井に固定したままケーブルの抜き差しをしてみます。そして結果は・・・。
結果は駄目です。起動しません。
直ぐにSWの所に行って、SW側のケーブルを抜き差ししてみますが、それでも起動しません。
原因の切り分けの為に直ぐに30m程のLANケーブルを作りました。念の為Fluke試験も問題ありません。
元々天井裏に配線していた配線とは別にEPSに設置してあるSWからAPまで新しく作ったLANケーブルで天井に設置してあるAPに直接接続してみます。
結果はやはり起動しません。どうやらケーブルの不具合でもないようです。
APの初期不良か? しかし、複数のAPが同時に起動しないなんて、もしかして機器のロット単位の初期不良なのか?
シリアル番号を確認してみますが、連続したシリアル番号の中で起動するもの、起動しないものがあります。どうやらロット不良の可能性も低い気がします。
さまざまな憶測と意見が飛び交いますがどれも決め手に欠けます。
何だろうと思い、APを一度天井から外してみて首を傾げながら眺めてみます。眺めてみた所でどうにもなりませんが・・・。
考えあぐねながら何気なくそのまま手に持ったAPをEPSのSWから天井経由の元の配線していたLANケーブルに再度接続してみます。
「え?」その場にいた全員が驚いて顔を見合わせます。
「あれ!?起動した・・・。え?なんで?」
「あ!!もしかして!」
作業員の一人が声をあげました。LAN配線とAPの取付を行っていた作業員です。
「そういえば随分前に別の現場で同じような事があった!随分前の事なので記憶に残っていなかったけど思い出した!そうか辻褄が会う!」
「なに?どういうこと?」
「今回天井に取り付けたAPなんですが、場所によって軽天に固定しているものとジプトーン天井にジプトーンアンカーで固定しているものと2つ施工法があるんです。」
「起動していないAPは全部軽天に金具で固定しているAPで、起動しているAPはジプトーンにアンカーで固定しているAPです。」
「起動するしないの違いはそれです!」
説明を聞いてもまだ理解しているものは他にいません。
「恐らくですが、軽天に何かあるんじゃないですかね?」
ここでその何かの推測を詳しく聞いてみるとなるほど!と思いました。
試しに次の2つの方法で起動に挙動の違いがあるか試してみます。
予想は的中でした!
天井にAPを取り付けた状態で起動させるとAPは起動しません。
しかし、APを天井から外した状態で起動させるとAPは正常に起動する事が分かりました。
作業員の一人が「多分あれが事務所に戻るとあると思うんで、工期も残っているので明日持ってきます。いやホームセンターにあるかもしれない。ちょっと近くのホームセンターに行ってきます。」
アレというのは取付金具と設置金具をネジで固定する時に両方の金属部分が直接接触しないようにする絶縁部材でした。
その部材を付けて再度APを天井に設置してみると、さっきまで起動せず異常のあったAPは正常に起動し再起動試験でも問題なく動作する事が出来ました。
お客様にもこの挙動を説明した所、今度建物の調査をしてみる事を検討します。との事でした。
稀な事例ですが、この記事を読んで下さっている皆様の参考になればと思います。
東京
東京都港区海岸1-2-3
東京都江東区森下3-10-23
仙台
宮城県仙台市太白区根岸町6
京都
京都市下京区高槻町346-1F
大阪
東大阪市西石切町4-1-39
広島
広島県広島市西区草津港1-7-5
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<全国一斉機器設置可能>
電話による問合せ [全国共通]